2014/01/04

ドール靴 に ハトメ を付けよう。― 菊割り棒の使い方。上手にハトメを付けるには?

たまには制作のコツ的投稿を。
ミニハトメの取り付け方についてのご質問をいただきました。何度やっても綺麗に付けられない。どうしたら良いかと?
ハトメとは靴紐を通す穴などの補強に使われる金具です。鳩の目の様なので鳩目。アイレットなどと呼ばれたりすることもあります。
取り付け方法は至って簡単。菊割り棒という道具を使って軽く叩くだけです。しかし、綺麗に取り付けるにはちょっとしたコツがあるので、今回はその話をしようと思います。

1、道具と材料。

ハトメを取り付けるには、「菊割り棒(もしくは単に菊割り)」という道具を使います。他にもハトメパンチハンドプレス といった綺麗に仕上げる道具もありますが、ハトメのサイズにあった物をそれぞれ揃えなければなりませんで、そうなると結構な金額になります。 よって大量に作るつもりがなければ、ミニチュア靴の道具としては実質的に菊割り棒一択ではないでしょうか。

菊割り棒
とはいえ菊割り棒にもサイズがあって、使用するハトメの大きさに合わせてそれぞれ使い分けます。 写真の太い方が直径約8ミリで、ハトメサイズが内径3ミリ以上の時に使います。
細い方の菊割は直径約4ミリで、ミニチュア靴のハトメにはこちらを使います。
見ての通り菊割り棒の先端には刃が付いています。手を切ったりするほど鋭利な刃ではありませんが、それでも刺されば痛いので、取扱いには注意が必要です。

ポンチ
言わずと知れた革に穴を開ける道具。
ハトメポンチ、革抜き、抜き、色々呼び名はあるようですが、ここではポンチと表示します。
サイズ表示は穴の直径で表示されている場合と、号数で表示されている場合とがあります。
例えば3ミリポンチという時は、穴の直径は3ミリですが、3号という時は穴の直径は0.9ミリ(1号0.3ミリ刻み)です。現物を見れば明らかですが、ネット等で購入の際にはご注意を!(3号=3ミリではない!)

ハトメ
ミニチュア靴、ドール靴を作る場合のハトメサイズは、通常は1~2ミリを使うことが多いと思います。(ここで言うハトメサイズとは穴の内径)
僕は人形の(或いは靴の)大きさや雰囲気によって、内径1.5ミリ、2ミリ、2.5ミリとを使い分けています。(具体例は後述)
ちなみに写真右の一番大きなハトメはドール靴には使いませんが、説明の都合上、大きくて見やすいので、今回はこれを使って話を進めます。

2、ハトメの取り付け方。

ハトメを取りつける位置に、ポンチを使って穴を開けます。 下に敷く物はゴム板やカッターマットです。 いきなり余談ですが、ポンチは使う前に、刃先を固形石鹸の上で数回トントンしておくと、刃先が石鹸でコーティングされて滑りが良くなり、穴の開きも綺麗になります。更にポンチ内のゴミも取れやすく、詰り難くなるのでおススメです。滑りを良くするという目的で、石鹸は色々な場面で活躍できます。覚えておくと便利ですよ!

開けた穴にハトメを表側から差し込み、足を裏に出します。
この時に、ハトメがクルクル動くようだと穴が大き過ぎるので、ポンチの番手を一段小さいものに変更してください。(対応表後述)
どちらかと言えば、穴が小さくてハトメの足が入り難いくらいで丁度良いです。(穴が緩いと、革が伸びた時に穴も一緒に広がって、そこからハトメが外れる原因になる)

ハトメの足に菊割り棒をセットして、真っ直ぐ下へハンマー等で叩いて足を割ります。ハトメの下には専用の台があればそれを、無い場合は例えば鉄板など、叩く力が逃げない位の固くて平らな物(ゴム板、カッターマットよりもっと固い物を推奨) を台にして、その上に(薄めの)革の端切れや、紙などを敷いて代用します。
* 革や紙を敷くのはハトメ表面に傷が付くのを防止する為なので、その目的が果たせれば何でも良い。
* ゴム板や木材等の柔らかい物を下敷きとしてお勧めしないのは、菊割り棒を叩いた時に、ハトメが下敷きに沈んでしまい、力が逃げてしまう為。また、真下に沈めばまだ良いが、傾いて沈むとハトメは間違いなく歪むので、下敷きはなるべく固く、傷がつきにくい物が良いです。

菊割り棒を叩く時は、大きな力で一発で叩くのではなく、力加減を覚えるまでは、小さい力で数回叩くのがコツです。あまり力を入れ過ぎると、足のみならず、ハトメそのものが潰れてしまいます。
目的はハトメの足だけが割れればよいので、ハトメ自体を潰さないように注意してください。 力の加減は、例えば机の上に自分の手のひらを置き、その上をハンマーで叩いた時に、ちょっと痛いかなぁ?というくらいで丁度良いと思います。ハンマーの頭を自然に落とす位の力で事足りるので、力一杯叩かないという事です。その辺を目安に自分で調整してみてください。
金属とはいえミニハトメは極めて小さいので、思っている以上に力は必要ありません。それよりも、菊割り棒を真っすぐ立てることの方に注力しましょう。

もう一つ注意があります。
足を割っている(叩いている)途中で、菊割り棒をハトメから外さないということです。 ちゃんと割れているかどうか確認したい気持ちは良くわかりますが、一旦菊割り棒を外すと、再びセットする際に、ハトメの割れ目と菊割り棒の刃の位置が合わなくなり、結果的に足が綺麗に割れなくなります。

では、割れたかどうかの判断はどうするのかと言えば、叩く音で判断します。或いは菊割り棒を持っている方の手の感触で判断します。注意深く観察すれば必ず変化が起こりますので、そこを見逃さずに。音で言えば響きが鈍くなります。手の感触で言えば、菊割り棒の先端が、下に敷いた台や机に達したような感触があります。 そこを見逃さずに!
固い台を敷いて使うと先述しましたが、この感覚が伝わりやすいという利点もあるのです。

ハトメの足が割れて外へカールして開きました。(写真上)
その様が菊の花びらのようなので、その道具を菊割り棒と呼びます。余談です。

作業はコレで終わりではありません。
まだ菊割り棒で足を割っただけなので、これから割った足の先端を、更に革へ食い込ませる為に、カールした部分を直接ハンマーで叩き込みます。(上下の写真を注意深く見比べると、足の先端が革に食い込んでいる様が分かると思います。)
カールした形は保ったまま、なので本当に僅かな力で叩きます。
この時は、足の真上から真下へ叩くのではなく、ほんの気持ち外側から円の中心へ向かって、カールした足の上をぐるりと一周叩きます。叩くというより当てる感じです。
実際にやってみればわかると思いますが、ハトメは小さいし、その足はさらに小さいので、ごくごく僅かな力だけで十分です。せっかく綺麗にカールした足を、潰して台無しにしない様に気を付けて下さい。

一旦まとめ。

菊割り棒はハトメの足を綺麗に割るだけです。
この段階ではまだ、ハトメの足が革に食い込んでいなくても構いません。
ハトメの足を革に食い込ませるのは、その次の工程なので、くれぐれも、いっぺんにやろうとしないこと!
菊割り棒をいくら叩いても、ハトメの足が割れていくだけで、果てはハトメが潰れるだけです。

表から見て、ハトメが綺麗に整っていれば完成です!
万一歪んでいたり、やり直したい場合は、喰切(クイキリ)を使って裏側の爪を除去した後でハトメを外します。

悪い例の写真を載せておきます。
【写真上右】ハトメの裏は平らに潰れています。
【写真下右】表側も叩き過ぎにより潰れて変形しています。
ハトメの足を平らに潰すと、何かの拍子で爪の先端を引っかけた時に、爪は起き上がって折れてしまいます。ハトメが外れるキッカケです。
また、足がカールしていないので、強度的にも不安です。
例えば一枚の紙があって、平らのままペラで一枚あるよりも、筒状に丸めた方が物理的な強度は上がります。 先述の「カールした形は保ったまま」 というのはそういうことで、強度を保持するということです。
但し、革が厚い時はハトメの足の長さが足りずに、足を割ってもカールするに至らない場合があります。その場合は、もっと足の長いハトメを使うのが正しいやり方ですが、残念ながらミニハトメにはそこまでのサイズ展開がありません。 なので仕方がないので、そのまま使うしかありませんが、それでも上記のことは出来るだけ意識して取り付けます。理屈を知らずにただ取り付けるよりは遥かにマシ。100点は無理でも、出来るだけ理想に近い形になるよう工夫が大事です。

裏地がある場合も取り付け方は同じです。 裏地を付けてからハトメを取り付けます。

さてさて、長くなりましたが、ひと通り説明はしたつもりです。
ハトメを取り付けるのは簡単ですが、綺麗に取り付けるにはちょっとしたコツがある。と、ご理解いただけたかと思います。また、そもそも取り付け方を間違えていた方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は特に、初心者の方が出来るだけ失敗しないような方法を書いたつもりです。
なので熟練の方から見たら、まどろっこしい部分もあると思います。
例えばハンマーの叩き方など、小さい力で数回叩くと言いながら、僕はもう力加減が分かっているので、実際には1つのハトメを付けるのに、2,3回しか叩きません。
なので毎回必ず書いてある通りにしなければならない、ということではありませんので、本質的なところだけ理解していただけたらと思います。
皆様の参考になれば嬉しいです\(^0^)/

今回ご紹介した菊割り棒とハトメはIVORYで購入しました。 ≫ 菊割り棒とハトメ各サイズの購入先

ミニチュア作りをしている人は良くご存知ですね?
特に菊割り棒 はネット上では一番安かったのに加え、道具としての仕上り具合もとても良かったです。これから買われる方には、特におススメですね。リンクを貼っておきましたので、よろしければご利用くださいませ。
(注意!)メッキ仕上げの安価な菊割り棒もありますが、メッキは剥げたらそこに段差ができてしまうので、道具としては致命的です。僅かな金額をケチったが為の代償は大きいので、オススメいたしません。



==【参考】=====

ミニハトメのサイズ選びで迷った時。

(表示寸法はハトメの内径)
  • 1.5ミリ|ブライス、オビツ11、同27、SD幼サイズなど、足長40ミリ以下の靴に推奨。
  • 2.0ミリ|SD、DDなど、上記以上に大きなドール向けの靴に推奨。
  • 2.5ミリ|SD13少年、同17など、大きな男子ドール向けの靴に推奨。
この辺りを基準とし、靴の性格や靴紐の太さを考慮してお決めになるといいと思います。
あえて小さいサイズの靴に、大きなハトメを付けるのも、デザイン上のテクニックとしてはアリです。
余談ですが、ハトメが多すぎたり、穴の間隔が狭すぎると、見た目はゴチャゴチャうるさい印象になります。
したがって、ハトメはサイズだけではなく、穴と穴の間隔も一緒に考えてデザインするのが良いと思います。
最後に、ハトメはサイズが小さいほど取付が難しくなります。小さいが故に弱い力でも潰れやすい(変形しやすい)からです。そのことを付け加えておきます。

推奨されるハトメとポンチと靴紐対応表。

ハトメサイズ ポンチサイズ(穴径) 靴紐の太さ
1.5ミリ 1.0~1.5ミリ 1.0ミリ
2.0ミリ 1.5~2.0ミリ 1.5ミリ
2.5ミリ 1.5~2.0ミリ 1.5~2.0ミリ
・ポンチサイズは、ハトメ取り付け部の耐久性を取るなら小さい方、作業性を取るなら大きい方を推奨。
・革の厚みや固さにもよるので、ひとつの目安にしてください。

今回はハトメの話でしたが、他にもカシメやホックなど、叩いて取り付ける系の金具はまだあります。いずれの場合でも、小さい力で数回叩くというのは同じです。また機会があったら別途ブログへ投稿するかもしれません。
それでは最後までお付き合い有難うございました。 本日これにて。

▼追記 2014/1/12▼
力の入らないハンマーがありました。 100円ショップで見つけました!
頭が小さく軽いので、なかなか力が入りません。どうやってもハトメを潰してしまうという方は、こんなのも使ってみたら如何でしょうか? 菊割り棒をちびちびと叩く感じで作業すれば、上手くいくかもしれません。
ちなみに下は、僕がいつも使っている製甲ハンマー。製甲とは靴の上半身(靴底より上の部分)を作ることを言います。 これは(人間用の)靴を作る道具なので、専門店に行かなければ売っていません。革を叩いても傷が付かないように、エッジが丸くなっています。余談でした。

▼追記 2014/2/7▼
ハトメ穴の補強について書きました。コチラも合わせてご覧下さい。
ドール靴 の靴紐穴(ハトメ穴)は、見えないところで丈夫に補強。

▼追記 2016/4/29▼
この投稿を参考にしたであろう内容の動画を、某有名動画サイトにて見つけました。
それは一向に構わないし、どんどんやってもらっても良いのだけれど、道具の使い方が致命的に間違えている箇所があったので、道具を大事にしたい方はご注意ください。

最近の投稿

▲ページトップ