2015/10/26

ドール靴 オーダーメイド 「ヴィクトリアン ボタンブーツ」 ― 人形作家様から個展向け衣装のご依頼をいただきました。

* 靴の意匠:ボタンブーツ
* 靴の種類:ショートブーツ
* 主要素材:牛革(カーフ)
* 靴の概寸:約105mm
* 対象人形:オリジナル球体関節人形
* 参考イメージ:ヴィクトリア時代に履かれていたような感じ

甲部の立ち上がりや履き口の頂上(トップライン)の流れるライン、踵後端からヒールに繋がるラインなど、横から見た時の美しさを特に意識して、曲線をふんだんに採り入れました。

機能面でもピタリと地面に貼り付くような、安定的な接地感が、見ていてとても気持ち良く、見栄えに大きく貢献します。

爪先と側面は親子穴(○:○:○:)で装飾。
特に側面の飾りは、装飾過多にならないよう注意して、ぐるっと一周しない代わりに、ミシンステッチとのコンビネーションでキメてみました。
存在感のある静かなお洒落を目指します。
やり過ぎないところがイイでしょ?

靴底はカラス仕上げ(全面真っ黒にすること。全カラスとも)。
染料と、熱で溶かしたワックスとで磨き上げる。
ウエスト(踏まず部)を絞り、曲面を強調して形状は色っぽく。
メリハリの効いたボディに、真鍮釘と飾り車(刻印の一種)で模様を刻む。フォーマルな中にも遊びを採り入れた“遊美”なお化粧を。
土踏まずの目立たない場所だけど、気付いた人だけをニヤリとさせる秘かなるお洒落(笑)です。

ボタンホールステッチは手縫い。今回はじめて挑戦しました。
新しい技術の習得は、できるだけ短期間に大量の稽古をするのが一番の近道。
なんでも出来ますって顔をしつつ、影でこっそり練習します(笑)
糸の太さ(番手)や、ステッチの幅を決めるのに、何度も試行錯誤を繰り返したことも手伝って、納得の域に達しました。

履き口の革が、開き過ぎて裂けないようシャコ止めを施す。
糸をクルクル巻いておけば用は足りるけれど、職人仕事っぽく(笑)敢えてシャコ止め。
見た目が蝦蛄に似ているからシャコ止め。和裁をやる人にはお馴染みかもしれないが(閂止め)、芯となる糸の上で、結び目を作っては寄せ、作っては寄せ、均一かつ重ならないように繰り返す。 小さな小さなチャームポイント!

細かいディテールまで積極的に採り入れましたが、手乗りです。
カワイイ(^ー^)

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▼制作後記▼
人形作家様からのご依頼で、ご自身の個展で発表される、新作人形が履くとのこと。
いつもと違う緊張感の中、制作に取り組みました。

リクエストはヴィクトリアン。
優雅な装飾が特徴的ですが、靴の仕事は主役を支えること。無用の派手さはご法度です。
その辺はわきまえて、装飾を足すのではなく、曲線美に焦点を当てた、静かで上品な最高の脇役に徹することにしました。

果たして、生まれたばかりのお人形さんに、気に入ってもらえるでしょうか?
ドキドキしながら感想を待ちます。

こちらの作家様の個展は、来月大阪で開催されます。
詳細はまた改めて、お知らせいたしますね。

▼追記(2015/10/28)▼
ブーツのご感想と、個展のお知らせを頂きました。
「ブーツを履かせるといよいよヴィクトリアンなお人形が完成した感じがして とても良かったです。」

肩の荷がスッと降りるようなご感想で安心しました。
さて、個展のお知らせは別記事を投稿しましたので、そちらをご覧ください。
『人形作家様より個展のご案内をいただきました。』

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